好きなことに情熱を注げば扉は開く。アーティストヘザー・ブラウンインタビュー


世の中に描くことが好きな人はたくさんいるけれど、実際に絵を描くことで生活出来る人は一握り、というのが今の世の中の定説。きっと、普通の親なら、子供が絵描きになりたいなんて言ったら、「儲からないから趣味にしておけ。」って言うんでしょう。

ハワイ、ノースショア在住のヘザー・ブラウンは、絵を描くことがお仕事。5月21日、22日にGreen Room Festivalにて展示されていた彼女の原画。ヘザーのアートともなると原画は相当良いお値段なわけですが、もちろん完売。

ヘザーのアートは見ていて楽しい。ハワイのトロピカルなビーチや波をテーマにしたアートが多く、そのどれもが個性的で、ヘザーにしか表現できない世界。スーパーアイドル並みの人気で、ブースには購入したアートにヘザーのサインをもらおうと常に長蛇の列。そんな忙しさの合間をぬって、ヘザー・ブラウンアートの裏側を聞くことができました。

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LA出身、2000年にハワイへ移住する前はハンティントンビーチ、ラグーナ、エンシニタスなどに住んでいたそう。
「いつもどこかもっとトロピカルで美しい場所に住みたいっていう夢があったのよ。カリフォルニアは多分100年前ならもっと良かったんだろうけど、人は増えすぎてるし、水もきれいじゃない。とにかくパラダイスに住みたいっていう思いがずっとあって。行ったことはなかったけどハワイしかないって分かってたの。」

「小さな頃から絵を描くのは好きだったんだけど、これが仕事になりはじめたのはハワイへ来てからよ。一度大学でアートを勉強した方が良いかな、と思って、UH(ハワイ大学)でファインアートの学位を取ったの。でも、アーティストとして仕事し始めたのは卒業してから1年後。それまではハレイワのダイビングショップで働いたりしてて、仕事は楽しかったし、絵を書くのは仕事の無い週末っていう生活をしてた。ただ、せっかく大学にも行ったんだし、やっぱりアートを仕事にしたいと思ったから、とにかく1年間自分に猶予を与えたのよ。やってみてダメだったら納得が行くしね。で、当時やってた仕事はぜんぶ辞めてとにかく絵を描くことに集中してみたら、なんだかこうして全て上手く行ったのよね。あの時の決断は間違ってなかったんだなって思うわ。」

今年2月に結婚したばかりというヘザー、夫のクリスとはサーフィンを通じて知り合った。クリスと二人暮らしの家が彼女のアトリエ。ププケアにある家にいる時はとにかくずっと大好きな絵を描いているか、波が良ければサーフという生活。
「冬のノースは大きすぎることも多いし、夏は全くフラットになっちゃうから、サーフィンは波次第ね。頭前後の程よいサイズの日はロングボードをやってるわ。あと、植物を育てるのも好きで、うちの庭には色んなものが生えてる!バナナ、アボカド、マンゴー、ライチ、スターフルーツ、レモンに、野菜とハーブも育ててるの。犬も飼ってるからビーチで散歩したりね。」

絵が好きで描くことが出来るならアーティストになるのは簡単かもしれないけれど、実際にそのアートを売るというのは全く違う次元の話。
「最初の頃は、自分でポートフォリオを作って色んなお店に営業してたわ。ただ、5年位前にノースで大きなアートショーがあったんだけどそのショーがきっかけでワイランドの専属アーティストにしてもらったのよ。アーティストとして本気でやってみようと思ったターニングポイントは間違いなく大学へ行ってからで、それまでは趣味としか思っていなかったから、例えば数週間何も描かないこともあったけど、あの時やるって決めてからはとにかく来る日も来る日も描き続けた。もっと上手くなりたい、そして自分のスタイルを確立したいと思うようになったの。でも、既にアーティストの世界ではスタイルなんてほとんどで尽くした感があるし、簡単なことじゃなかった。」

ヘザーのアートは一目見れば忘れられない。そしてそれは間違いなくヘザーのアートでしかありえない。彼女のスタイルはどこから来ているのでしょうか。
「大学にいた頃、版画を良く作っていたんだけど、その影響は大きいわね。太いラインで囲まれた版画ね。ただ、卒業したら版画をやる機会があまりなくなって、それを表現したのが今の全てをラインで囲むっていうアート。」

そしてヘザーのアートを印象付けるのはその自然描写の美しさ、というよりも楽しさ。
「とにかくいつも身の回りにある自然をよく観察してるわ。影の具合、形、色・・・じーっと見てると白昼夢を見てるような気分になっちゃうこともあるくらい。特に何か考えながらみているっていうより、自然と自分の中に吸収する感じかな。」


自然をテーマにしたアート、そして波乗りがテーマになったアートも多数ありますが、波乗りは彼女のアートにどんな影響を与えたのでしょう。
「サーフィンの影響は本当に大きいわ。サーフィンしにいくでしょ。で、波を待ってるんだけど、波に乗る気なんて全くなかったりするの。波が自分に向かってくる様子や、他の人が波に乗ってる様子、水がどんな感じかとかをじーっと見てるわけ。友達に“何しに来たんだ?!”ってよく笑われるんだけど、私は海の中にいられること、それだけで嬉しかったりするのよね。カリフォルニアに住んでいたころはダイビングをしていてハワイに来るまでサーフィンはしたことがなかったんだけど、波乗りを始めてからダイビングはやめちゃった。」

ハワイに移住してほんの数年でヘザーは趣味だった絵を描くことを仕事にして生きることができるようになった。これは、絵描きで食っていくなんて到底不可能、とか、何年も努力して下積みしなければ無理だという世間一般の常識からはかけ離れているわけで、一体何が彼女をこのような短期間で成功に導いたのか、きっと誰もが知りたいはず。自分の好きなことを仕事にするのに大切なことって何?
「私はとにかく絵を描くのが好きだった。一番大事なのは自分が好きなことは何なのかだと思う。その好きなことに情熱と時間を注げばなぜか分からないけど、色んな扉が開き始める。これは不思議なことなんだけど、本当に宇宙の法則が働き始めるって感じなのよ。例えば、動物が好きで、水彩画を描くのが好きな人がいたら、動物を水彩画で描き続けるの。でも、本気でやらなきゃだめ。私は好きだから苦にならないけど、10時間くらい描き続けることもあるわ。それくらい本気でやっていると必ず上手く行くのよ。」

途中で挫折しそうになったことは?と尋ねたら、すぐに「NO!」という答えが返ってきました。
「ダイビングショップや不動産屋で働いてたこともあるし。最初はどうなるかわからなかったわ。学校で、絵を描くことを仕事にしたいっていうと、たいていの先生は、じゃあ、もっと勉強してアートの先生になりなさい。って言うのよ。実際に絵を描いて生活をするなんてムリだっていう前提で話をする。私はとにかくあきらめないことが大事だと思う。アーティストになる前、私は海に関する仕事がしたいと思っていたの。だからダイビングのライセンスをとって、そしてダイビングショップで働けるようになった。同じようにアーティストという仕事にチャレンジしてみようと思ったのよ。チャレンジするだけなら何も失うものはないでしょ。とにかく絶対自分はアーティストになるんだって既に分かっていたっていってもおかしくないかもしれない。信じ続けることが一番大切なことだと思うわ。」

ヘザーのアートには、美しい自然への愛を感じることが出来る。
「今、人間に必要なのは少し立ち止まってみることだと思う。平凡な毎日がどれだけステキかっていうことを感じてみること。アメリカでは、大きな家を持って、良い車に乗って、たくさんお金を稼ぐことが大切なことだって思ってる人が多い。自分に本当に必要なものは何かっていうのを知ること、そしてバランスを取ることが大切だと思う。私が日本に来て感じたのは、日本の人は、自然や人間関係とかほんのちょっとしたことに感謝することが出来る人が多いなって言うこと。どんなに良い車を持っていても幸せじゃない人だっている。今回日本で起きた原発の事故にしても、最終的に自分でコントロールすることが出来ないものを作るべきじゃなかったんだと思う。私たちには、太陽や風っていうエネルギーがタダで与えられているんだから、それを使えば良いし、使うためのテクノロジーだってどんどん開発されているわ。そして、多分私たちもこれまでエネルギーを必要以上に使っていて、全てのバランスが崩れてしまっている。自然はバランスが崩れたらそれを感じて、「ちょっと待って」っていう警告を発することだってある。世の中そういうものだと思うのよ。」

自然回帰への想いを自由に表現することでたくさんの人に自然の美しさを伝えているヘザーのアート。初めて会った本人も、彼女のアートがそのまま人間になったような美しくてナチュラルで楽しい人だった。現在夫のクリスと新しい洋服のブランドのプロジェクトを立ちあげようとしているとか。また、情報が入り次第こちらでもお知らせしようと思います。

Thank you Heather and Chris.
http://www.heatherbrownart.com/