パタゴニアアンバサダー、べリンダ・バグスインタビュー。環境に影響をあたえない生き方。


 

まるで小鹿がサーフボードの上を歩くように、信じられないほど繊細にロングボードを乗りこなしているかと思えば、インドネシアの巨大な波に挑む。オースト ラリア出身、パタゴニアのアンバサダーとして知られるべリンダ・バグスは女性フリーサーファーのアイコンのような存在である。

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サーファー一家に生まれたべリンダは、幼いころから波と遊ぶことを覚え、初めて波に乗ったのがいつだったかも覚えていない。サーフィンは、生まれたときから知っている感覚だという。二十歳ごろまでは試合でもかなりの好成績をのこしていたが、それは、彼女が求めるサーフィンではなかった。「サーフィンは大好きだったけど、誰かと競い合うのは嫌いだった。試合はわたしの知っているサーフィンとは全く違う次元のもので、じゃあなんで試合に出ているんだろうと疑問に思った日からやめてしまった」。パタゴニアと出会い、アンバサダーとして世界を旅するという、サーファーならば誰もがあこがれる生き方を現実に生きているべリンダが、夫アダムと共にサーフィンは、子育て、そして環境問題について語ってくれた。

 

Belinda-007-パタゴニアとの出会いは?
べリンダ:カリフォルニアに何年か住んでいたことがあるんだけど、パタゴニアとはそのころから共通の友人を通してのつながりがあったの。当時、パタゴニアはレディースの製品をテストするサーファーを探していたんだけど、わたしほどサーフィンしてるサーファーは他に知らないってことで、製品テストのサーファーに選ばれたのがはじまり。わたしにしてみればそれこそ夢がかなった!って感じだった。6年前、20代なかばだったかな。

 

-パタゴニアのアンバサダーになるまでは何をしていたの?
サーフィンよ。毎日サーフィン。高校卒業後、両親は大学に行きたいならもちろんサポートするっていってくれたんだけど、わたしにはサーフィン以外にやりたいことがなかったし、じゃあ、やりたいことがみかるまでサーフィンしてようかな。って感じで、毎日毎日サーフィンばっかりしてた。お金はないから超シンプルな毎日を送ってたわよ。たまにウェイトレスのバイトなんかはしていたけどね。いまではそのサーフィンがわたしの仕事になって、パタゴニアのインドネシアトリップではアダムにも出会えた。

 

P5264409-子供が生まれてからのサーフィンは?
べリンダ:そうね、生まれたときは、サーフィンのことはしばらく忘れてお母さんになるんだって思った。もちろん波乗りをやめることはなかったけど、昔みたいにバカみたいにサーフィンばっかりっていう生活ではなくなると思った。でも、アダムがいるおかげで子育てもサーフィンも両立できてる。アダムはわたしがどれだけサーフィン中毒かを知ってるし、一週間サーフィンしなかったらどれだけ機嫌が悪くなるかも知ってる(笑)

アダム:ビンディーのサーフィン中毒っぷりは相当重症だ。昨日は千葉でサーフィンしたんだけど、混雑とは無縁なインドネシアのパーフェクトウェーブがあたりまえな僕は、2本波に乗ってもういいや。って感じで先にあがった。もどってきたビンディーに、どうだった?って聞いたら「もう最高!」って言うんだ。そんなわけないだろ!って感じなんだけど、彼女は、どんな波でもどんなセッションでもいつも最高だっていう。

べリンダ:わたしはどんな波でも楽しくて仕方がない。今は子供がナンバーワンなのに間違いはないけど、でもサーフィンをしていないと、わたしは悪い人間になる(笑)それはアダムも理解しているし、2時間波に乗っただけでハッピーなお母さんになれる。いまはそういう時間が前よりも大切に感じる。

(ここで息子レイソンのオムツを変えだす夫アダム。)
アダム:インドネシアでは友達がつくったリゾートにとまったりするんだけど、そんなところにオムツは売っていない。それに、そこら辺でウンチをしてもあとから燃やせばいいけど、化繊のオムツは燃えない。だからぼくらは何度でも使える布おむつを使っているんだ。でも、そのオムツを洗うのに洗剤を使わなきゃならないわけで、それ自体が環境に影響をあたえる。だから、そういう場所に滞在しているときは、まず海でオムツを洗って、洗剤はちょっと使えばすむようにしたり、いろいろと工夫しているんだ。

 

-あなたたちみたいに、オムツが地球に与えるインパクトまで考える人って少ないと思うけど、そういうことに気を使いだしたのは?
べリンダ:ずっと海のそばに住んでいて、ただ人間が生活するということが、どれほど海を汚すかっていうのをみてきたからかしら。小さなゴミがウミガメを殺してしまったりするわけで、サーファーとしてそういうことを目の当たりにしたとき、自分の行動一つ一つがどれほど環境に影響を与えるかを考えるようになった。だから、どんな決断も意識的にするようになった。でも、旅に出ることが多いと、なかなか思うようにできないことも多い。たとえばオムツとかね。化学繊維のオムツを買うしかない場合もある。でも、自宅に帰ったときに、その分環境にやさしいものを使って、バランスを取るようにしている。

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-こういう世の中で子供を育てるのって大変だと思いますか?
べリンダ:子供をつくるにあたって、わたしたちがいちばん話し合ったのがその部分。いまの世の中で子供を産んで、その子供が30歳、40歳になったとき、幸せでいられるんだろうかって。子供が50歳になったときには地球がなくなっているかもしれない。でも、二人で話しあった結果、わたしたちの子供が、この世界をもっと良い世界にしてくれるかもしれないっていう結論にいたった。彼が成長して、多くの人に影響をあたえて、もっと多くの人が環境について考えるようになればいいなって思ったの。
飛行機に乗ることじたいが環境によくないことなのはよくわかっているから、旅先ではできるだけシンプルな生活を心がけてる。たとえばインドネシアの人々の生活は、まず、モノをあまり持たないところにある。リサイクルはすばらしいけど、その前に、持っていなければリサイクルする必要もない。プラスチックごみが環境へあたえる影響の大きさは最悪だから、たとえば、水を飲むときは、再利用できるボトルを使うし、できるだけプラスチックは使わないようにしているわ。水も電気も、できるかぎり使わない。旅をすることで、気づかされることはほんとうに多い。美しい島がゴミだらけになっているのをみたり、どんどん開発されるのをみたり。とても悲しい現実でできることは少ないけど、わたしがサーフィンを通してみたものをシェアすることで、変えることはできなくても、多くの人に影響を与えることはできるかもしれないと思っていて、それがわたしたちの仕事だと思っている。

 

P5264406アダム:海から帰ってくるときは必ずゴミを拾って帰るし、レイソンにも拾わせる。環境問題が大変な問題なのはたしかだけど、ぼくらは専門家ではないわけで、まだまだ知らないことの方が多いし、なにかを偉そうにいえる立場ではないけど、ぼくらはシンプルな生き方をすること、たとえばごみを拾うことといった小さなことでも自分たちができることを行動であらわすしかないと思っている。

 

べリンダ:わたしたちのライフスタイルは、普通の人の生活とはちょっとかけ離れているかもしれないけど、海のごみを拾うような小さなことが周りに影響を与えはじめて、それがもっと広がって行ったら、それは世界を変えることもできるかもしれないと思っているの。すべてのことに意識的でいることが大切だと思う。

 

アダム:世界を旅することで悲しい現実を目の当たりにすることも多いぼくらが必死になって気を付けても意味なんてないんじゃないか?って思うことだってある。でも、それは正しい考え方じゃない。自分たちができることをちょっとずつやっていくことこそに意味があるし、それがまわりに影響をあたえられるなら最高の仕事だと思っている。

Interviewed By Eri

 

 

 

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