祖母の宴と鎮魂


老人

先週一週間の間に、母方の祖母の米寿のお祝いと、父方の祖母が90歳でこの世を去った。

めでたく88歳を迎えたおばあちゃんには、ひ孫たち(わたしの子ども)のビデオメッセージを送り、その数日後…この世を去ったおばあちゃんには、最後のお別れをしに家族で出かけた。

まるで正反対な出来事が起きた一週間、わたしはぞれぞれのおばあちゃんとの思い出を、遠い記憶の中からうーーーーんと、思い出したりしていた。

父方の祖母とは、色々と事情があり、残念だけど、これと言って思いだされることはなかった。

母方の祖母との思い出はそれなりにあったけど、とても働き者で、実家から車で片道三時間の距離を、季節ごとに年に数回訪れても、朝の早くから夕方まで、あまり姿を見かけることはなかった。

 

そんな母方の祖母との一番の思い出は、おばあちゃんの作るかりんとう。

祖母は、特に料理好きというわけではないけれど、おばあちゃんの作るかりんとうは、絶品だった。

数年前、わたしはレシピを直接聞いた。

田舎の言葉で語られるレシピは、所々何を言っているのか、理解できない。そこで、母を通訳に介し、わたしはなんとなく作り方を聞き出した。

粉一キロに、砂糖一袋の半分より少し多めを、卵5個か6個位によく溶いて、塩とふくらし粉をちょっと。それらをとにかくよく捏ねて、少し放置して、あとは成形して油であげるだけ。

材料

とてもアバウトなレシピであったけど、何度か自分で作ってみた。だけど、祖母の作るようには美味しく出来ない。見た目も味も、まぁまぁの出来栄え。

味はドーナッツで、食感はめちゃくちゃ固い。一度食べだすと止まらない。

もうこの一本で最後と、心のなかでつぶやくのだけど、そのつぶやきはループする。

「この一本で最後、この一本で最後…この一本でさーいごっ…」

そのうち母から、

「Halu〜、いい加減にせられー。」

と、とどめをさされていた。

小さい頃、家族旅行に行く予定が、わたしがはしかにかかり、キャンセルとなった。楽しみだった予定がなくなり、体中にぶつぶつがあるだけで、元気なわたしはすっかり落ち込んだ。その時、おばあちゃんのかりんとうを、母と一緒に二人で作った。

わたしの結婚式には、田舎から祖母が、かりんとうを作ってきてくれて、母が綺麗にラッピングをして、みんなに配った。いつも、スーパーの袋にガサっと入っていたビジュアルだったので、それを見たときは、すぐにおばあちゃんのかりんとうだと、気づかなかった。

 

そんな色々なことを思い出しながら、久々に作ってみた。

かりんとう

父方の祖母との思い出は全く無いのだけど、その祖母の人生はなかなか壮絶だったらしい。わたしは固く扱いづらい生地を捏ねながら、「おばあちゃん、幸せだったのかな〜」と、永遠に解けない問を、自問していた。

そんな祖母の血を継ぐわたしは、小さな希望を捨てきれず、

どうか「幸せだった」という人生でありますように…。

亡くなるまで、まるで他人のように思っていた祖母のことを、ひとり静かに追悼した。

 

シンプルな材料で作られるかりんとう。その割に、作る工程は結構手間がかかって、めんどくさい。だけど、一旦出来上がってしまえば、その苦労は葬り去られ、山盛りのかりんとうは、我が家の腹ペコキッズ達の胃袋へ、次々と入っていく。

「この一本で最後、この一本で最後…この一本でさーいごっ…」

母となったわたしは、昔母がわたしにしたように、

「もうやめときーー!!」

と、とどめをさす。

あ〜でもね、わたし知ってる。そんな風に言っちゃったけど、わたし…知ってるよ。

カリポリカリポリ…

どうやっても止まらない事を…。

花

 

「米寿のお祝いに送ったビデオメッセージを見て、泣いたおばあちゃん。」

「棺の中、穏やかな顔をして、花の布団に包まれていたおばあちゃん。」

 

普段は全くなくせに、今日だけは二人への思いがどうやっても止められなくて、それどころか溢れてくる。

カリポリカリポリ…

自分で作った、不細工なかりんとうを食べながら。

かりんとう

:Halu


老人

2 件のコメント

  • はるかさん、読ませていただきながら…お会いしたことが無いおばあちゃんが、にこにこと「そうなんですよ~」って言っておられるような気がしました。いつもながら…素敵なお話し、今回も心に響きました~~★ポリポリカリカリ、かりんとうを食べてる音が聞こえてくるような~~☆

    • みどりさん、温かいコメントありがとうございます。仕組みが分からず、お返事遅くなりました(泣)小さい頃の思い出の味は、大人になってからも大切なものですね〜。カリポリカリポリ…。

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    halu

    海の近くに住んでるけど、全く泳げない。だから海は温泉のごとく浸かりにいくもの。浸かってると、良いも悪いもぜーんぶ溶け出ていって、しまいには消えてなくなってしまいそうになる、あの感覚が大好き。愛しのダーリンShakaちゃんと2人でブログを書いてます。こちらでは、Haluの独断と偏見で思いつくままに綴っていきます。